2015年11月19日木曜日

オーストラリアを狙う中国:一帯一路の始点はオーストラリア・ダーウィンから、中国が99年間租借へ

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● 一帯一路の始点はオーストラリア・ダーウィンから


JB Press 2015.11.19(木) 北村 淳
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/45294

オーストラリアと米国の同盟関係に中国がくさび
通商・軍事の要衝、ダーウィン港を中国が99年間租借へ

オーストラリア北部に「ダーウィン港」という通商・軍事の要衝がある。

 およそひと月ほど前、
 中国の“民間企業”である「嵐橋集団(LANDBRIDGE)」がダーウィンの港の「99年リース権」を手に入れる契約をオーストラリア北部準州政府と交わした。
 リース権の入手価格は5億600万オーストラリアドル
であった。

オーストラリアならびにアメリカの防衛当局の間で、この契約が深刻な問題となっている。

■かつては列強が中国の土地を咀嚼、今や逆の立場に

 インフラ・エネルギー関連企業である嵐橋集団は中国山東省を本拠地にし、港湾ロジスティックス、石油化学関連事業、木材輸出入、不動産開発、それにホテル経営など幅広い事業を手がけている。

 2014年には、オーストラリアのブリスベンを本拠にするガス会社「ウェストサイド」を敵対的買収によって手に入れたことで話題になった。
 ウェストサイドの買収契約署名式(2014年11月17日)は、ちょうどオーストラリアを訪問していた習近平国家主席とアボット首相(当時)の立会いのもとにオーストラリア連邦議会内で実施された。


●「ウェストサイド」買収契約締結式(写真:嵐橋集団)

 今回のダーウィン港租借契約によって嵐橋集団が99年間使用権を得るのは、ダーウィン港ならびにダーウィン港付属のいくかの主要施設(イーストアーム埠頭、マリンサプライ基地、フォートヒル)である。
 嵐橋集団は、リース契約料に加えて2億オーストラリアドルを投じて港湾設備や周辺の整備を推し進めることを表明しており、北部準州政府の期待は大きい。

 ウェストサイドのような一企業の買収と、ダーウィン港のリース契約は意味合いが大きく異なる。
 ダーウィン港のリース契約は、港湾施設ならびに港湾を含む周辺土地の租借によって、“オーストラリアの土地”を中国企業に99年間使用させるのである。

 かつて香港をはじめとする中国各地の土地がヨーロッパ列強や日本などによって租借されてしまった。これと真逆の状況になっているというわけだ。

■ダーウィンはアメリカ海兵隊の拠点

 「ダーウィン港99年租借契約」の締結が発表されると、オーストラリアのシンクタンク「オーストラリア戦略政策研究所(ASPI)」はオーストラリア国防上の懸念を表明し、オーストラリア連邦政府による再検討を提言した。

 アメリカ海兵隊部隊は過去数年間にわたって、数カ月交代でダーウィン郊外を訪れ、オーストラリア軍による水陸両用作戦能力構築を支援している。
 アメリカ海兵隊とオーストラリア軍による水陸両用作戦合同訓練も、ダーウィンを中心とする地域で実施されている。

 沖縄の海兵隊基地問題が長らく解決しないことなどの影響で、米軍は太平洋地域の海兵隊展開を見直している。
 ダーウィン近郊における以上の米海兵隊の動きは、その一環である。
 現在進行中の計画では、2500名規模の海兵遠征隊を定期的にダーウィンに駐留することになっている。

 ただし、オーストラリアでは法律によって外国軍の完全な駐留は認めていない。
 そのため、日本のように永続的な海兵隊基地をオーストラリア領内に設置することはできない。
 そこで海兵遠征隊は数カ月ごとにダーウィン郊外にローテーション展開する形をとることになっている。

 その際、アメリカ海兵隊展開部隊は、ダーウィン港を使用して兵員・資機材の揚陸や、弾薬・食料の補給などを実施しなければならない。
 現在構築中のオーストラリア軍水陸両用部隊も同様である。

 ASPIによると、軍が使用する埠頭そのものは租借契約には含まれていない。
 ただし、その埠頭に至る道路を含む各種港湾施設は嵐橋集団が管理することになる。

 ダーウィン港は、アメリカや友好国の軍艦が毎年100隻以上も使用している。
 当然のことながら、アメリカ海兵隊やオーストラリア軍からは深刻な警戒の声が上がっている。

■武装民兵部隊も有する嵐橋集団

 ASPIはダーウィンの軍事的重要性とともに、嵐橋集団に対する疑義も提示している。

 ASPIによると、中国の大規模“民間企業”のほとんどが、中国共産党や人民解放軍との関係が極めて曖昧である。
 しかしながら嵐橋集団と中国共産党そして人民解放軍とのつながりは他の企業以上に極めて密接であり、“民間企業”というよりはむしろ党と軍の“フロント企業”と考えなければならないと指摘している。

 嵐橋集団を率いる億万長者の叶城理事長の名刺には、「中国人民政治協商会議全国委員会」ならびに「山東省人民代表大会」のメンバーであることが明記されているという。
 この事実は、叶氏が中国共産党といかに密接なつながりを持っているかを何よりも強く物語っているとASPIは指摘している。

 さらにASPIが注意を喚起しているのは、嵐橋集団に設置されている共産党支部組織の書記長、賀照清氏である。

 賀氏は、人民解放軍を退役してから、日照港公安局の政治局次長や日照港湾グループの共産党委員会メンバーを歴任している。
 また、2013年に賀氏は、山東省政府によって「国防に著しく寄与した10名」の1人に選ばれている。

 さらに2014年8月には、嵐橋集団の内部に人民解放軍の支援を得た「人民武装民兵部隊」が設立された。この武装組織を指揮するのが賀氏なのである。

 これらの事実は、いかに嵐橋集団が中国共産党および人民解放軍と緊密につながっているかを示している、とASPIは主張している。

■契約の再考は困難

 「ダーウィン港99年租借契約」の締結に疑義を呈しているのはASPIだけではない。
 オーストラリア労働党なども中国企業のオーストラリアへの大規模参入に反対している。

 こうした声を受けて、オーストラリア連邦政府は、もう一度連邦政府レベルでの嵐橋集団によるダーウィン港租借契約のレビューを行う方向での検討を始めた。

 ただし、北部準州政府も嵐橋集団も、契約締結以前に連邦政府機関(国防省ならびに外国投資調査委員会)とは十二分に話し合っていると主張している。
 そのうえ、北部準州政府は強烈に嵐橋集団の投資を歓迎している。
 北部準州政府はASPIの論調に対して
 「大きく事実を歪めた論説であって、オーストラリアに反中思想と、排外思想を広めようと目論んでいる悪意ある主張だ」
と批判している。

 近年まで白人至上主義が残存していたオーストラリアでは、「反中思想」や「排外主義」といったレッテルを貼られることは、“弱み”となってしまいかねない。

 また、北部準州政府に支払われる巨額の資金はすでに銀行に振り込まれており、北部準州としては絶対に契約を見直すわけにはいかない。

 さらには、連邦政府内部でも「国防に関わるような取引をいい加減に監督していたのか? 連邦政府の緊張感を欠いた態度は追及されるべきだ」といった責任問題になるのを避けようという動きが生ずるであろう。

 以上のような理由によって
 「ダーウィン港99年租借契約が破棄されることは極めて考えにくい」
とオーストラリアでは考えられているようである。

中国が推し進める「海のシルクロード」の拠点の1つにダーウィン港が組み込まれる日は間近に迫っている。




時事通信 2015/11/19 11:22
http://www.jiji.com/jc/zc?k=201511/2015111900293&g=int

中国への大牧場売却認めず=「安全保障上のリスク考慮」―豪

 【シドニー時事】
 オーストラリアのモリソン財務相は19日、牧場運営会社S・キッドマンが進める中国企業への巨大牧場売却計画について、「国益を損なう」として認めない方針を表明した。
 対象は10カ所の牧場で、総面積は約10万平方キロと、韓国に匹敵。
 日本や米国に牛肉を輸出している。
 モリソン財務相は「対象は豪農地の2.5%に相当する。
 一部の牧場は武器試験場に近い」と述べ、「安全保障上のリスクを考慮して売却に反対する」と説明した。
 売却先には、中国の上海鵬欣集団などの名前が挙がっていた。
 交渉額は推定3億6000万豪ドル(約320億円)。



時事通信 (2015/11/09-16:44) 
http://www.jiji.com/jc/zc?k=201511/2015110900561&g=int

中国企業に大牧場売却か
=広さは韓国に匹敵、警戒論も

【シドニー時事】
 オーストラリアの牧場運営会社S・キッドマンによる大規模な牧場売却交渉が大詰めを迎えている。
 9日付の豪紙によると、交渉相手は中国の上海鵬欣集団に絞り込まれた。
 韓国(約10万平方キロ)に匹敵する総面積がある牧場が、中国企業の私有地になる可能性が高まった。

 対象は「世界最大牧場」を含む複数の牧場で、一部は基地にも近い。3億5000万豪ドル(約300億円)近くで交渉中という。
 生活水準向上や一人っ子政策廃止で、中国では牛肉消費の拡大が予想される。
 豪州産牛肉の対中輸出急増を見込み、中国企業による牧場買収意欲が強まった。
 売却には豪政府の承認が必要になる。

 9月に就任したターンブル首相は「中国との経済関係強化を重視する実利派」(専門家)。
 一方で政府内には、海洋進出を強める中国への警戒論が根強く、今回の売却に安全保障上のリスクを指摘する声もある。
 新政権の対応が注目を集めそうだ。



ロイター 2015年 11月 19日 10:46 JST
http://jp.reuters.com/article/2015/11/19/australia-foreigninvestment-idJPKCN0T804S20151119

豪政府、国益理由に外資への大規模牧場売却を阻止

[シドニー 19日 ロイター] -
 オーストラリア政府は19日、同国最大の地主である牧場運営会社S・キッドマンによる外国人投資家への大規模な牧場売却を国益に反するとして阻止した。

 オーストラリアでは、アジアの食糧需要の急増を背景に外国人による土地買収が加速し、農地の所有権が政治問題化している。
 キッドマンが国内に所有する10の牧場の合計面積は10万平方キロメートルを超え、韓国の国土面積に匹敵する。
 最も大きい牧場の一部は兵器実験場がある南オーストラリア州の立入制限区域に位置している。
 同社は4月、他の事業や投資の資金を得るため、牧場運営事業の売却を模索していると発表。
 地元メディアは匯智資産管理と上海鵬欣の中国2社が売却先の有力候補と伝えていた。
 売却額は約3億5000万豪ドル(2億5000万米ドル)とみられている。

 モリソン豪財務相は声明で、キッドマンの所有する土地の「規模と重要性」を踏まえると、現在の形での外国人投資家への売却は国益に反すると説明。
 売却に絡む国家安全保障上の問題にも言及した。
 キッドマンのグレッグ・キャンベル最高経営責任者(CEO)は、同社は政府の決定に驚いていると表明。
 「政府と再び協議し、売却先候補がこれらの懸念を解消できるかどうか具体策を検討する必要がある」
とし、売却先に国内パートナーを含めることや牧場の分割売却の可能性を示唆した。

 今年3月以降、オーストラリアでは、1500万豪ドル(1250万米ドル)を超える農地を外国人が取得する場合には外国投資審査委員会(FIRB)による承認が義務付けられている。



サーチナニュース 2015-11-20 09:21
http://news.searchina.net/id/1594755?page=1

豪州不動産、中国人の爆買いに「待った」!・・・
外国人の購入物件に強制売却を命じる=中国メディア

 中国メディア・京華時報は19日、大都市の不動産価格上昇が続くオーストラリアで、政府が外国人による不動産の不法購入の取り締まりを強化しており、中国人が違法購入した物件の強制売却が命じられる事案が発生していると報じた。

 記事は、スコット・モリソン財務相が18日、今年3月から外国人の違法売買の取り締まりを開始して以降、中国人が昨年520万オーストラリアドル(約4億6000万円)で購入したメルボルンの豪邸を含む、
  外国人が違法購入した物件19件の強制売却を命じたことを発表した
と伝えた。

 そのうえで、同国の法律では
 「特定の状況を除いて、外国人は新築住宅のみ購入可能で、中古住宅の購入はできない」、
 「12カ月以上の滞在ビザ所有者が住宅物件1件を購入できるが、同国を離れたばあいは3カ月以内に売却しなければならない」
と規定されていることを紹介。
 一方で、条件を満たさない外国人の多くが現地仲介業者や弁護士、友人の助けを借りて住宅を違法購入しているとした。

 そして、同国政府が12月1日までに税務当局に状況説明を行えば処罰を免除する措置を取り、この期限を過ぎたばあい違反者を刑事告訴するとともに罰金を科すとしていることを併せて紹介した。

 今回のオーストラリア当局による取り締まり強化はあくまで外国人の違法購入者を対象にした者であるが、その主たるターゲットは国外不動産購入購入ブームが起きている中国にあることは間違いなさそうだ。

 はじめから法の網の目をかいくぐっての違法購入はもってのほかだが、現地のルールに対する理解が浅いことによる不動産売買トラブルも多い。
 また、現地住民とのトラブルも問題だ。
 先日も、メルボルンで建物を新築するために築100年の古い豪邸を取り壊す際、現地住民から強い反発を受けたことが報じられた。



NNA 11月23日(月)8時30分配信
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20151123-00000009-nna-asia

【オーストラリア】外資の資産取得、規制見直し:州・準州政府の公的資産売却で

 オーストラリア連邦政府のモリソン財務相は、州・準州政府の公的資産売却について、連邦政府の審査なしで外資が取得できる現行規制の見直しを始めたと明らかにした。

 外国からの投資をめぐっては、米海兵隊が駐留する北部準州(NT)で
 ダーウィン港の99年間リース権を中国企業が落札
した一方、
 牧畜業者S・キッドマン&カンパニーの牧場11カ所については外資への売却を認めない
など、国全体で政策が一貫していないことが問題視されている。
 オーストラリアン・ファイナンシャル・レビューなどが伝えた。

 同相は「公的資産の外資への売却について、州・準州政府と話し合いを行っている」とし、
 「特に州・準州政府が保有する非常に重要なインフラ資産の支配権(sovereignty)の取り扱いについては、
 国の制度上の問題があるため連邦政府が一方的に制度の見直しを行うことはできない」
と、州・準州政府と足並みをそろえて制度の見直しに取り組む方針を示した。

 現行制度では、州・準州政府は保有する土地について、一定の条件を満たせばオーストラリア外資審議委員会(FIRB)の審査を受けずに外資に売却することができる。
 ダーウィン港のリース権落札は、FIRBの正式な審査を受けていなかった。

 同相は19日、世界最大の肉牛牧場を含む牧場11カ所を外資が取得できない最大の理由として、牧場1カ所の敷地の約半分が兵器試験などを行う南オーストラリア州のウーメラ禁止区域(WPA)に位置しており、「安全保障上の問題」があることを挙げた。
 その一方、ダーウィン港のリース権を中国の人民解放軍と関係が深いとされる中国のエネルギー・インフラ企業、嵐橋集団(ランドブリッジ)が落札したことについては
 「NT政府の決定であり、連邦政府が決めたことではない」
と述べるにとどめている。



サーチナニュース 2015-12-10 17:30
http://biz.searchina.net/id/1596720?page=1

中国人需要にかげり 
オーストラリアの不動産市場で15%減、価格も下落

 中国新聞社によると、オーストリアの不動産市場で中国人による需要が前年同期比で10%-15%減少している。
 代表的都市では不動産価格が下落しているという。

 オーストラリアの不動産価格は、2005年ごろから目立って上昇するようになった。
 中国人によるニーズが大きく影響したとされている。
 しかし、オーストラリアの不動産仲介業者のマックグレースによると、シドニーにおいて中国人によるニーズが15%程度減少したという。
 不動産研究機関のコアロジックが12月初旬に発表したオーストラリアを代表都市であり、それぞれが州都(含、準州都)のキャンベラ、アデレード、メルボルン、シドニー、パース、ホバート、ブリスベン、ダーウィンの8都市のうち、5都市で不動産物件価格が下落した。
 8都市全体の価格指数は1.5%低下したという。

 香港に本部を置く里昂証券(CLSA)によると、2014年に実施した調査でも、中国資本はオーストラリアの不動産市場における最大の国外資本と確認された。
 ただし「中国人の投資者はまだ存在する。
 しかし1年前と比べて10%から15%減少した」という。

 中国人の投資により不動産価格が高騰し、その後下落する現象は米国でも発生している。

 不動産情報サイトのズィローによると、2015年9月には前年同月比でラスベガスの不動産価格は33%上昇、サンフランシスコ、フェニックス、サン・ディエゴ、オレンジ郡(カリフォルニア州)はいずれも20%以上の上昇だった。

 しかし第3四半期(7-9月)には価格上昇が急減速し、オレンジ郡は1%、サン・ディエゴは2%、さらにサンフランシスコは3%と、2012年初以来、最少の上げ幅だったという。










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